はじめに
動物看護師の皆さん、細胞診って聞くとちょっと難しい、よくわからないって思っていませんか?この講演では細胞診の目的と方法、染色、封入まで基礎からお話しします。動物看護師という専門職として、獣医師が行う細胞診のアシストをしてみませんか?
・細胞診の目的
細胞診は何のために行うか、考えたことはありますか?病気の診断のためではありますが、もっと広い目的を持っています。例えば足にしこりがあって、得られた細胞が炎症細胞なのか、腫瘍細胞なのかで治療方針は変わってきます。つまり細胞診とは、そこにある病気の治療方針を決めることが大きな目的であって、確定診断がつかないことも多いのです(むしろつかなくてもいいんです)。
・細胞診の種類
細胞診には、FNA/FNB、スタンプ、スクラッチ、液体検体の遠心後の沈査などいくつかの作成方法があります。それぞれどんなときにどの方法を選ぶのか、またどんな準備が必要なのか、さらに採材のポイントについて講演でお話しします。
・染色
染色は主にヘマカラーやディフクイックと呼ばれる簡易染色と、ライトギムザ、メイギムザ染色といったギムザ染色の2つに分かれます。簡易染色は短時間で染色が可能ですが、実施者によって染ムラができやすく、染色性もあまりよくありません。一方ギムザ染色は時間と手間はかかりますが実施者による染ムラがでにくいといった特徴があり、状況に応じて使い分ける必要があります。それぞれの特性を理解したうえで、正しい染色方法を選択できるようになりましょう。
また染色が終わった後は必ず標本の品質を確認します。細胞がほとんどとれていなかったり、とれてはいるもののアーチファクトが強く診断価値に乏しいもの、染色不良など失敗例をいくつかご紹介します。
・封入
封入には標本を保護し退色や変性を防ぐというメリットがあります。また40倍の対物レンズでの観察には封入が必要となるため、標本の保存や詳細な観察を行うには封入を行ったほうがよいでしょう。封入にはキシレン系のマウントクイックやキシレンフリーのパラマウントなど様々な製品が利用可能です。いずれの製品も気泡を抜きながら丁寧に封入するには慣れが必要です。
・診断依頼書の作成
動物病院によっては細胞診の診断依頼書作成を動物看護師にお願いしているところもあるかもしれません。またそうじゃない場合も、書きますよ!と言ってみましょう。診断依頼書の作成ポイントについても簡単ですがご説明します。
おわりに
細胞診は検体が液体であったり、塗りつけられた細胞であったりと非常にもろいため、取り扱いに慣れておかないと、「触らないで!」と言われてしまいがちです。でもそこでしっかりと検体の取り扱いを理解した動物看護師さんがいたら、「お願いします!」に変えることができます。細胞診の目的は“治療方針の決定”と言いましたが、それは検体の扱い次第で治療方法が変わってしまう可能性もあるということです。適切なアシストを学んで、ぜひ明日からの診療に役立たせましょう!