転移病変に対しリン酸トセラニブの投与を行った組織球性肉腫の犬の1症例
田川道人,新坊弦也,富張瑞樹,渡邉謙一,古林与志安
症例は8歳4カ月のバーニーズ・マウンテンドッグ,去勢雄であり,肺腫瘤の精査を目的に帯広畜産大学動物医療センターを紹介受診した.切除組織の病理学的検査にて肺原発の組織球性肉腫と診断し,第36病日よりロムスチンによる術後抗がん剤治療を行った.ロムスチン5回目投与時に右兼部に5cm大の皮下腫瘤を認め,細胞診にて組織球性肉腫の転移病変と診断した.ドキソルビシンを使用したが効果はみられず病変は11cm大まで増大した.第172病日よりリン酸トセラニブの投与を開始したところ転移病変は急速に退縮し1.5cm大まで縮小した.しかし第301病日に転移病変の再増大と胸水貯留を認め,ビンクリスチンを投与するも反応なく第318病日に斃死した.一時的ではあったものの,リン酸トセラニブの劇的な効果がみられた稀な症例と思われた.
日本獣医師会雑誌
76
8
e202
e207
https://doi.org/10.12935/jvma.76.e202
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvma/76/8/76_e202/_article/-char/ja/