リヒター症候群と診断した T細胞性リンパ腫の犬の1症例
田川道人,松本高太郎,麻田正仁,弘川治喜
8歳5カ月齢のマルチーズ、避妊雌が体表リンパ節の腫大を主訴に近医を受診した。精査を希望して帯広畜産大学動物医療センターを紹介受診した。体表リンパ節の腫大を認め、針穿刺吸引細胞診(FNA)では小型のリンパ球が主体であり、T細胞性のモノクローナルな増殖が確認されたことから、小細胞性リンパ腫と診断し経過観察を行った。その後第441病日に更なる体表リンパ節の腫大を認め、FNAでは中~大型のリンパ芽球が主体であった。またこの時の検体においてもT細胞性のクローン性増殖が確認され、T細胞性大細胞性リンパ腫と診断したので、抗がん剤治療を行ったものの、治療開始から68日で斃死した。T細胞性クローンが検出された初診時と第441病日のT細胞レセプター(TCR)遺伝子の塩基配列を比較したところ、100%一致していたことから本症例はリヒター症候群に移行したものと思われた。
北海道獣医師会雑誌
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