人は,自分の怒りを恥ずかしいものと感じたり,悲しみを厄介なものと思うなど,自己の情動に対して評価的な捉え方をすることがある。本研究では,このような自己情動への評価の個人差は,他者との関係性の中で情動をどのように取り扱われてきたかに関連しているのではないかという観点に基づき,関係性の指標として愛着を取り上げ,情動(悲しみ・怒り)への評価との関連について調べた。大学生ら149名を対象に質問紙調査を行った結果,情動への他者懸念的評価は両価的な愛着や,回避的な愛着(悲しみのみ)と関連しており,情動への負担感は,両価的な愛着と関連していることなどがわかった。これにより,概して情動への否定的評価と不安定な愛着スタイルが関連していることが明らかになった。また,その関連性は,より詳細には,情動の性質と愛着のスタイルによってそれぞれ異なることが示された。