安定同位体セシウム(Cesium;Cs)を用いて、Cs添加がインフルエンザウイルス(IAV)感染に及ぼす影響をin vitroで検討した。IAVはH1N1亜型(A/NC; A/New Caledonia/20/1999)、細胞はA549細胞とMDCK細胞を用いた。初めに、A/NCをMOI 0.1(trypsin 1.0 μg/ml)でのA549細胞に感染かつ細胞上清にCsClをウイルス感染24時間前から感染後48時間まで添加した場合における、細胞上清のウイルス感染価 (48hr p.i.) とCsの細胞障害性について検討した。次に同条件下で細胞内Flu M1 mRNA量、IFNβ mRNA量、IFNλ2/3 mRNA量について 検討した。これらの結果から、CsがIAVの細胞侵入に影響する可能性が示唆された。そのためMDCK細胞を用いたプラークアッセイで、Csを添加した場合のIAVのプラーク数の変動と、KチャンネルブロッカーであるTEAを添加した場合のIAVのプラーク数の変動を検討した。その結果、A/NC 感染では、48hr p.i.の細胞上清のウイルス感染価は1mM群では CsCl非添加群に対して約1.8倍増加した(p < 0.05)。1hr p.i.では、細胞内Flu M1 RNAはCsCl 1mM群で有意に増加した。 48hr p.i. のIFNβ mRNA量、IFNλ2/3 mRNA量は、有意差は認められなかった。 MDCK細胞を用いたプラークアッセイでは、Cs 1mM・3 mM群でプラーク数は有意に増加した(p < 0.05)。TEA(10 mM)群においてもプラーク数は有意に増加した(p < 0.05)。低濃度のCsCl 添加でIAVの細胞への侵入が増加することが示唆されたが、更なる検討が必要である。