Eukaryotic elongation factor 2 (eEF2) kinase (eEF2K)は特異的基質であるeEF2をリン酸化することでタンパク質翻訳を抑制する。当研究室ではこれまで自然発症高血圧ラットにおいてeEF2K選択的阻害薬A484954はnitric oxide (NO)産生を介して降圧作用や利尿作用を誘導することを明らかにした。肥満・2型糖尿病モデルラットであるOtsuka Long-Evans Tokushima Fatty rat (OLETFラット)は2型糖尿病の病態進展に伴い全身血圧が上昇する。この機序の一部に対照ラットであるLong-Evans Tokushima Otsuka (LETO)ラットと比較して摘出腸間膜動脈における収縮能の亢進が関与することが報告されている。また、NO合成酵素阻害薬が胸部大動脈においてsodium glucose co-transporter 2 (SGLT2)発現を亢進することが報告されている。A484954はNO産生を誘導することから、OLETFラットにおいてSGLT2に作用し血糖値を低下させることや、血管拡張作用により降圧作用を誘導する可能性が考えられる。このため本<!--[if !supportAnnotations]-->研究は、A484954投与がOLETFラットにおいて高血糖及び高血圧に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。14-17週齢OLETFラット及びLETOラットにA484954 (2.5 mg/kg, i.p.)又は溶媒対照としてcarboxymethyl celluloseを7日間腹腔内投与した。OLETFラットにおいてA484954投与は、①随時及び空腹時血糖値を有意に低下させ、②尿中グルコース排泄量を有意に増加<!--[if !supportAnnotations]--><!--[endif]-->させ、③腎臓組織においてSGLT2タンパク質発現を有意に減少させ、④収縮期血圧を有意に低下させ、⑤摘出腎動脈標本においてNOを介して血管拡張を誘導し、⑥尿量と尿中Na+排泄量を増加させ、⑦腎臓組織においてendothelial NO synthaseのリン酸化を有意に亢進し、⑧左室駆出率と左室内径短縮率を有意に増加させた。一方で、LETOにおいてA484954 (2.5 mg/kg, i.p.)投与は血糖値や血圧、左室収縮能に影響を及ぼさなかった。以上より、A484954は、SGLT2発現抑制を介して尿中グルコース排泄量を増加させることで血糖値を低下させること、さらにNO産生を介した血管拡張や利尿作用により降圧作用を誘導することで、糖尿病と合併症である高血圧病態を改善すること、さらには強心作用を有することが初めて明らかになった。
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