本課題の目的は「表現スキームの理論を用いて極大コーエン・マコーレー加群の圏構造を解析し, 表現スキームの幾何学的な性質から表現型を特徴付ける」ことである。一般に加群を分類することは不可能だが、加群の次元を制限することで表現スキーム(加群多様体)による階層的な分析が可能になる。従って、「階層的な分析=表現スキーム」の考察は分類理論において重要な意味をなす。
平成30年度は名古屋大学の高橋亮氏との共同研究で、極大コーエン・マコーレー加群の同型類のなす集合に対して位相構造を定義し、その位相による既約閉部分集合の分解について考察した。基礎環が高次元多元環の場合、加群の退化が推移性の成立は未解決だが、直和を許せば成立することが知られている(高橋、2018年)。従って加群の退化の関係は、直和を許せば加群の同型類のなす集合に閉包作用を定義することができる。この点に着目し、極大コーエン・マコーレー加群のなす集合に位相構造を定めた。主な結果として、基礎環が加算CM表現型をもつ超曲面環で奇数次元A型、または任意次元D型の場合においては、極大コーエン・マコーレー加群の集合は有限個の既約閉集合による和集合で記述できることがわかった。以上のことについて、論文を執筆し、投稿中である。
加群の退化理論は加群多様体の幾何学的構造が背景にある。この考察はこれまであまりなされていなかった高次元の退化理論の幾何学的側面の考察を行ったものであり、その点において意義がある考察と考えられる。