誘電分極に関する実験教材として,木や水が静電気に引き付けられる現象が用いられることがある.また,分子の極性を示すための実験教材として,液流(例えば水流)が帯電体によって曲がる現象が用いられることもある.しかし,木や水は高電圧の静電気にとっては導体であり,これらの現象は静電誘導で説明できる可能性がある.そこで,試料に帯電体を近づけたときにはたらく力を実測し,有限要素法による静電気力の計算結果と比較したところ,帯電体が木に及ぼす力は静電誘導により説明できることわかった.また,種々の液体について,液流に帯電した金属棒を近づけたときに液流が帯電することを見出し,このときの液流の曲がり角と帯電量を測定した.これらの結果と有限要素法を用いた静電気力の計算により,液流が曲がる主要因は誘電分極であるが,静電誘導の寄与もあることが示唆された.