ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)でこれまでに報告されている自己溶菌酵素オートリシンはAcp(CPE1231)である。Acpは、cell-wall binding domain (CWB)とcatalytic domain (AcpCD)から成り、細胞分裂やストレス誘発性自己溶菌に関与している。分子量は120 kDaであるが、95 kDaに切断される。一般的に細菌が分裂する際、オートリシンはseptumに集合している。Acpも対数増殖期には、septumやpoleに局在していることがすでに報告されているが、本研究では、定常期を含めてAcpの局在を調べたので報告する。
Strain 13 acp::erm株はB. Dupuy博士(パリ・パスツール研究所)より供与された。95 kDaに切断されない120 kDa変異Acp (R296A, S297A)をコードする遺伝子を持つプラスミド、95 kDa Acpをコードする遺伝子を持つプラスミドを作製し、strain 13 acp::erm株に形質転換した。ウェルシュ菌に抗AcpCD抗体を反応させた後、細胞表面のAcpを共焦点レーザー走査型顕微鏡で観察した。
野生株strain 13株では、Acpは、対数増殖期にseptumやpoleに局在していたが、定常期には細胞表面にほとんど認められなくなった。Acp(R296A, S297A)のみ発現する変異株では、120 kDa Acpは、対数増殖期、定常期ともにseptumやpoleに局在していた。95 kDa Acpのみ発現する株では、95 kDa Acpは、対数増殖期にseptumやpoleに局在していたが、定常期になると、95 kDa Acpはほとんど局在しなくなった。野生株では、120 kDa Acpが、対数増殖期で多く認められることから、以上の観察結果は、整合性があると考えられた。