Clostridium perfringensは偏性嫌気性菌であり、通常の大気曝露のストレスにより自己溶菌を引き起こすことが知られている。また、本菌は胆汁酸塩や抗生物質(Vancomycin)によるストレスによっても自己溶菌が誘発、促進される。これらのストレス誘発による本菌の自己溶菌には、正常な細胞分裂にも必要な酵素である自己溶解酵素オートリシン(Acp)が関与していると考えられている。
一方、オートリシンを含む様々なpeptidoglycan hydrolaseは種々の金属により、その酵素活性能が変化することが知られている。本研究では、Acp活性および種々のストレス誘発C. perfringens自己溶菌に対するZn2+の影響について検討した。
Zymographyを用いて組換え体Acp(rAcp)の活性に対する種々の金属(Mg2+、Ca2+、Zn2+、 Cu2+およびCo2+)の影響について検討した。また、C. perfringens st13株から調製したペプチドグリカンを用いてrAcpの活性に対する亜鉛の影響について検討した。
通常大気中での本菌の自己溶菌に対するZn2+の影響を調べるため、TBSにて懸濁したC. perfringens st13を平底プレートへ播種し、終濃度2mM Zn2+を添加し、通常大気中で37℃反応させ、10分毎に濁度を測定した。また、終濃度0~10 mM Zn2+を本菌へ15分間反応させ、その後、3回洗浄することで、亜鉛を除去した後、同様の方法で濁度を測定した。
胆汁酸塩および抗生物質ストレス誘発自己溶菌活性に対する亜鉛の影響を調べるため、終濃度0または10 mM Zn2+を本菌へ15分間反応させ、その後、3回洗浄し、亜鉛を除去した後、本菌を胆汁酸塩(終濃度0.3%)または各抗生物質(終濃度Vancomycin 6.8 µg/mLまたはPenicillin G 0.141 µg/mL)を含む平底プレートへ播種し、BHI液体培地および嫌気条件下において6時間培養した。0、1、2、3および6時間後の濁度を測定した。
Zymographyの結果、Zn2∔を含むRenaturing緩衝液で反応させたゲルのみが、rAcpによる溶解バンドが検出できなかった。また、Zn2+はrAcpによるペプチドグリカン溶解を阻害した。Zn2+はC. perfringens st13株の大気曝露ストレス誘発自己溶菌を阻害し、その阻害作用はZn2+を洗い流した菌体でも認められた。さらに、同様にZn2+を反応・洗浄した本菌は胆汁酸塩およびVancomycinストレス誘発自己溶菌に対して抵抗性を示した。以上のことから、Zn2+はAcpの酵素活性を阻害することで、種々のストレス誘発によるC. perfringensの自己溶菌活性を阻害できることが示唆された。