病原細菌は宿主組織に付着して増殖し、感染巣を形成する。 そのため、 宿主組織に対 する病原細菌の付着因子は感染症を成立させるために重要である。 現在、付着因子の一 つと して Fibronectin(Fn)結合タンパク質 (Fbps)が知られている。我々はヒトに対して ガス壊疸を引き起こずウェルシュ菌が複数のFbps を有することを見出した。一方、Fn は血漿や組織中に含まれる細胞外マトリックスタンパク質(ECM)の一 つであり、Fnの線維化は初期の創傷治癒に深く関与してい る。Fnは12個のType I module、 2個のType II module 、15~17個のType Ill moduleから構成されている2本のポリペチド鎖から 成る。Fnの線維化は Type III module の12~14番目(III12-14)と別のFn 分子のType I moduleの1~5番目が結合することにより引き起こされる。 Dermatopontin (DPT)はこの反応を促進する生体内分子として現在、唯一 報告されている 22 kDaのECM である。DPTの中 でDP-4と呼ばれ る領域 (-PHGQVVVAVRSーの11残基)が主にFn線維化は Type III module の12~14番目(III12-14)と別のFn 分子のType I moduleの1~5番目が結合することにより引き起こ される。 Dermatopontin (DPT)はこの反応を促進する生体内分子として現在、唯一 報告されている 22 kDaのECM である。DPTの中 でDP-4と呼ばれ る領域 (-PHGQVVVAVRSーの11残基)が主にFn線維化を促進することが知られている。我々は近年、ウェルシュ菌Fbpsの中のFbpAおよびFbpBがDPTと 結合することにより、DPT誘発Fn 線維化を阻害したことを見出した。本研究はDPTの活性中心であるDP-4と FbpAおよびFbpBとの相互作用、さらにFbpAのどの領域がDP-4との結合に関与するのかについて検討した。
遺伝子組換え体FbpA(rFbpA) 、FbpB(rFbpB)および III12.14(r1II 12.14)は造伝子組換え体大腸 菌を用いて大量発現させ、 ニ ッケルアフィニテイカラムで精製した。 DP-4、biotin標識化DP-4(biotin DP-4) はジェンスクリプト株式会社 に依頼 して合成した。 ま たFbpAのDP-4 との結合領域 を特定するために、 FbpA を20 ~30残基ずつに分割したFbpA Over lapping peptide (OLP) No. I~11をジェンスクリプト株式会社に依頼して合成 した。I) rFbpAおよびrFbpB と DP-4 との相互作用については Enzyme Linked Avidin Biotin Complex 法(ELABC 法)および競合 Enzyme Linked Immunosorbent Assay(競合ELISA) で検討した。2) FbpA の DP-4との結合領域の特定は各種FbpA OLP を用いて競合ELISA、 ELABC法、 Ligand Blotting法にて行った。
1)rFbpAおよびrFbpB と DP-4との相互作用
ELABC 法によりコ ー ティングした rFbpAおよびrFbpBに対してbiotin DP-4は有意に結合した。 また、 競合ELISAによりDP-4はコ ーティングrFbpAおよびrFbpBに対するDPTの結合を談度依存的かつ有意に抑制した。2) FbpAのDP-4との結合領域の特定
競合ELISAによりFbpA OLP No. I、 2、3、 8、9 、 10がrFbpAおよびrFbpBに対するDPTの結合を濃度依存的かつ有意に抑制した。 また、ELABC法によりbiotin DP-4はFbpA OLP Nol、3 、4、6 、 7、8、9、1Iと 有意に結合し た。Ligand Blotting 法により biotin DP-4 は FbpA OLP No. 3、9に結合した。
FbpAおよびFbpB は少なくともDP-4と 結 合していること、 さらにFbpAの中のNEKILSRFSELSNEEKELIDINKITDPLHI(No.3 )およびIGNDTEVAFVSALCKTSNPEQGTYR SIGFD(No.9)の領域がDP-4との結合に関与している可能性が考えられた。