【はじめに】
近年、病原細菌の宿主への付着因子としてFibronectin(Fn)結合タンパク質(Fbps)が注目されている。現在、Fbpsは宿主Fnと結合するだけではなく、バイオフィルム形成および宿主免疫からの回避など付着能以外にも多様な機能を有することが注目されている。
我々は以前、Fnと結合するウェルシュ菌(本菌)表層上タンパク質を見出し、質量分析を行った。その結果、Hypothetical protein CPE0630が存在し、これをFbpDと命名した。SSDBによる検索の結果、FbpDはN末端側にcell wall-binding repeats(CWBRs)、C末端側にペプチドグリカン(PG)分解に関与するペプチダーゼを有していることが予測された。
本研究はFbpDの機能性について、in silico および in vitro の両面からの解析を行った。
【方法】
1) in silicoによるデータベース解析
配列類似性解析として BLASTp、ドメイン解析としてSMART、モチーフ解析として PROSITEによる検索を行った。AlphaFold2 による FbpD 立体構造予測を行い、PDBファイルを取得し、構造類似性解析として DALI によるFbpD の機能予測を行った。
2)in vitroによる解析
FbpDがPGの分解に関与するかを調べるため、遺伝子組換え体FbpD-His6(rFbpD)を精製した。rFbpDを用いて、本菌菌体を基質とした濁度減少法および本菌調製PGを基質としたZymography assayを行った。
FbpDが実際にCWBRsを有しているかどうかを調べるため、pull-down assayを行った。rFbpDを本菌菌体および本菌調製PGへ反応させ、遠心し、上清および沈査物に対してウエスタンブロッティング(WB)を行い、抗His6抗体を用いてrFbpDを検出した。また、FITC標識rFbpDを本菌菌体と反応させ、洗浄し、緩衝液により懸濁後、フローサイトメトリー(FCM)による解析を行った。
FbpDがペプチダーゼ活性を有するかを調べるため、3.0 µm beadsにCasein-FITCを吸着させ、rFbpDまたはBSAを一定時間反応させた。その後、遠心し、上清を破棄し、数度洗浄した。洗浄後、緩衝液により懸濁し、FCMを用いて蛍光強度の減少を計測した。また、酸性カルボキシペプチダーゼ活性キットを用いてrFbpDのペプチダーゼ活性を測定した。
【結果および考察】
1) in silicoによるデータベース解析:いずれの解析手法でも、FbpDはcell wall-binding proteinが検出された。また、BLASTpやDALIの解析によってFbpDはアミダーゼやペプチダーゼとの相同性が認められた。
2) in vitroによる解析:濁度減少法ではrFbpDが本菌菌体を溶解させ、Zymography assayでは、FbpDの分子量付近に明確なバンドが出現した。pull-down assayにおいて、WBでは本菌菌体、PGの双方の沈査成分にバンドが検出され、FCM解析ではFITC標識rFbpDの濃度依存的に蛍光強度が増強した。ペプチダーゼ活性測定において、Casein-FITC標識ビーズを用いたFCM解析ではrFbpD はBSAよりも有意に蛍光強度が減少した。また、酸性カルボキシペプチダーゼ活性キットを用いた解析ではrFbpD はBSAよりも有意にペプチダーゼ活性を有していた。
これらの結果より、FbpDは本菌細胞壁に結合しているペプチダーゼ活性を有するタンパク質であることが考えられた。