真核生物とされる最古の化石は, アフリカ・ガボン南東部の前期原生代(約22億年前) の地層から発見されている. 本研究は, 同地域 (フランスヴィル地域, ラストゥールヴィル地域, オコンジャ地域) に産する化石 (複数種) が真核生物であるか検証すること, 各化石の分布および初出層準を特定すること, 同位体層序を用いて当時の地球化学的環境変動を調べることにより, 真核生物の進化に必要な条件の解明を目指している.
2020年度には, 前年度に新たに採取した陸上掘削コアについて詳細な分析を推進し, ラストゥールヴィル地域において, 無機炭素・有機炭素同位体比の高解像度層序を世界で初めて確立した. これにより, 炭素同位体分別効果および微生物活動についての考察が可能になった. さらに, 岩石薄片の顕微鏡下観察により高解像度の岩相層序を確立し, 炭素・窒素同位体層序の変化が堆積場の変化によるものか否かを判定した. その結果, 前期原生代に安定して高い値 (+5‰~+8‰) を保っていた無機炭素同位体比が負の値 (-2‰) に推移し, その後に真核生物化石が初めて出現したことが明らかになった. この変化に伴って炭素同位体分別が30‰から45‰に変化することから, 光合成からメタン資化主体の炭素循環環境へと変化した可能性が示唆された. これまでに得られた成果を, 学会 (JpGU-AGU Joint Meeting) において発表した.