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モンゴル・ゴビ砂漠に分布する上部白亜系からは、恐竜類を中心とした脊椎動物化石が豊富に産出し、世界有数の化石産出地となっている。近年においても、恐竜類や哺乳類などの新種化石の報告が相次ぎ(Kobayashi et al. 2025; Okoshi et al. 2025; Voris et al. 2025)、その古生物学的重要性を指摘されている。これらの上部白亜系は、ゴビ砂漠の東西およそ1000kmの間に広く分布している。これらは、河川成層、湖成層、風成層などとされ、岩相の側方連続が極端に悪く、かつ示準化石となる微化石の産出も乏しい。加えて、鍵層として有用な火山灰層も乏しく、層序対比が困難であった。このような問題解決へ向け、近年では現地性の土壌性炭酸塩岩(カリーチ) 中の方解石や、恐竜の歯化石を構成する燐灰石に対して、U-Pb年代測定法を用いた地質年代制約の試みが報告されている(Kurumada et al. 2020; Tanabe et al. 2023)。これらの結果はいずれも先行研究より推定された堆積年代と整合的であり、手法の有用性が確認されている。そこで、広域に分布する化石産出層の層序対比を可能にするために、化石産出層に対し、より広域に堆積年代測定を行うことが望ましい。本研究では、モンゴルゴビ砂漠に散在する上部白亜系の広域層序対比のため、カリーチに含まれる方解石を用いてU-Pb年代測定を実施した。カリーチは、土壌中での生成過程や続成作用により、方解石を晶出する。さらに、このような土壌性炭酸塩岩は、ゴビ砂漠の上部白亜系に広く分布する。したがって、ゴビ砂漠の上部白亜系に関する放射年代と層序関係を明らかにする対象に適している。本研究で対象とした試料は、Bayn shire地域に分布するBaynshire層、Javkhlant地域に分布するJavkhlant層、Altan Ula地域に分布するNemegt層のカリーチである。これら地層は、いずれも河川成層より構成される。岡山理科大学–モンゴル科学アカデミー古生物学研究所の合同調査隊により、現地性のカリーチと確認された6試料を測定対象とした。偏光顕微鏡観察から測定試料を比較した結果、微細構造に違いを認めたものの、すべての試料内において、砕屑物の間隙を方解石が充填する構造が認められた。砕屑物は主に石英や長石類より構成され、金紅石(←ルチルのこと?)、柘榴石なども確認された。方解石の晶出状態はミクライトやノジュール/コンクリーション質、スパー状など多様であった。方解石に対しEPMA組成分析を行ったところ、その組成はほぼ純粋(MgO<1 wt %)であることが確認できた。LA-ICP-MS U-Pb年代測定では、偏光顕微鏡およびLAカメラの反射光により注意深く方解石の測定位置を選定し、測定を行った。その結果、6試料中3試料より地質学的に意味のある年代値を得ることができた。本発表では、現在までの進捗状況と結果を報告する。 |