Elimination of toxic substance through the activation of bitter taste receptors
中村元直
ヒトは G タンパク質共役型受容体(GPCR)ファミリーに属する 25 種類の苦味受容体遺伝子を持つ。筆者らは最近,この苦味受容体に関して以下の 3 つの知見を得た。(i)表皮角化細胞には 25 種類全ての苦味受容体遺伝子が発現する。また,ヒト皮膚角化層にも苦味受容体タンパク質を検出できたことから,外界に最も接する表皮組織に苦味受容体が発現していることを確認した。(ii)興味深いことに,この受容体は表皮角化細胞の形質膜ではなく,細胞内に局在する。細胞破砕後の分画では当該受容体は膜画分に検出されることから何れかの細胞内オルガネラ膜に局在するものと推察する。(iii)表皮角化細胞を苦味物質に曝すと異物排出に関わる ABC トランスポーターの発現が増強する。以上の知見より,筆者らは,皮膚細胞内で待ち受ける苦味受容体が細胞内に侵入した有害物をリガンドとして感知し,活性化によって排除機構発動でシグナルを惹起することで有害物を積極的に細胞外に排出するという仮説を立てた。本稿では,筆者らが見出したこれら知見の具体的な紹介と,筆者らが想像する苦味受容体の新奇な生体防御機能について論じたい。
別冊BIO Clinica
北陸館
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