スフィンゴ脂質による骨格筋形成のコントロール
長田洋輔,松田良一
骨格筋の再生は筋サテライト細胞の活性化,筋前駆細胞の増殖,分化,融合といった多段階のプロセスを経て実現される。迅速な筋再生のためには,各過程が適切に制御される必要がある。われわれは,動物細胞の細胞膜を構成する主要なリン脂質のひとつであるスフィンゴミエリンに注目した。スフィンゴミエリンは,セラミド等の貯蔵体として,また脂質マイクロドメインの構成要素として働く。細胞表面のスフィンゴミエリンは,休眠状態の筋サテライト細胞では多く,活性化状態の筋サテライト細胞,筋前駆細胞,筋管,筋線維では少ない。筋サテライト細胞活性化の過程では,スフィンゴミエリン代謝産物のひとつであるスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)が産生され,S1P受容体を介して活性化シグナルを増強する。また,筋管形成においては,スフィンゴミエリンの合成が抑制的に制御されることで筋管の過剰な肥大化が防がれている可能性を明らかにした。
月刊細胞
ニューサイエンス社
第52巻
第12号
697
700