絶滅種ミナミトミヨの古標本の3D モデル化の試み
鹿野 雄一 , 菊川 裕幸 , 奥田 ゆう , 林 昭次 , 三橋 弘宗
ミナミトミヨ(Pungitius kaibarae)は,かつて兵 庫県・京都府の湧水を水源とする水辺環境に生息し ていたトゲウオ類で,1960年代に絶滅したとされ る(細谷 2015).朝鮮半島にも同学名のトゲウオ類 が現存し,遺伝子分析による系統地理的な検討が 進められているが(Takahashi et al. 2016),これらが 同一種であるかどうかは不明な部分があり,ミナミ トミヨについては学術的な検討が望まれる(細谷 2015).しかし日本のミナミトミヨは絶滅種で新た な採集が不可能なため,既存標本のデジタルアーカ イブにより高精細画像や3Dデータの作成と公開が 重要となる. かつてミナミトミヨが生息していた丹波市の「青 垣いきものふれあいの里」は地域の生物標本を有 するが,それらの中にミナミトミヨの標本が残され ている.そこで本試行では,このミナミトミヨの標 本を後世に確実に残すべく,CTスキャン(例えば Kano et al. 2018)および3D フォトグラメトリによ りデジタル化しオンラインで公開(https://ffish.asia/ MWKR)したのでここに報告する.なお,保存状 態がCTスキャンデータに与える影響を比較するた めに適正にホルマリン標本化されたキタノメダカ (Oryzias sakaizumii),ミナミメダカ(Oryzias latipes), カダヤシ(Gambusia affinis)についても同一条件下 でCTスキャンによるデジタル化を実施した.
湿地研究
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