岡山県の勝山町は真庭市に位置する三浦邸は、明治に入ってから元藩主の屋敷として建てられた。この三浦邸と、
江戸時代に建てられた岡山県内
の5棟の武家屋敷を比較し、三浦邸の平面構成の特徴を明
らかにすることを目的とした。
6棟を比較して、武家屋敷の基本
の間取りは共通していることが明らかになった。接客空間には、玄関の間、座敷、座敷
に入るまでの控えの間があること、私的空間には、内玄
関の間、土間、台所があり、これらは江戸時代でも明治
時代でも設けられている。また、おもてとうらがはっき
り分かれている。違う点としては、座敷の位置である。
現代の家では、座敷は南側に設けられている印象がある
が、江戸時代の屋敷を見ると、北側に設けられている屋
敷が数棟存在している。江戸時代は、光がほどよく入り、
きれいな庭を眺められることが重要視されていたため、
北側に座敷を設けていた。しかし、時代が下がるにつれ、
きれいな庭を見ることよりも明るく、光が当たり暖かい
空間であることの方が重要視されるようになり、南側に
座敷が設けられるようになった。また、比較により、三
浦邸は、2 階建てであること、正式な客間である 1 階の座
敷、そこから雁行する形で設けられている主人が使用し
ていたと考えられる座敷、2 階の座敷、これらすべて南か
ら採光が取れるようになっていることが特徴である。こ
れらのことより、近代に入って建てられた三浦邸におい
ては、接客空間としての座敷までの動線やおもてとうら
の空間構成といった基本的な間取りは変えずに、近代以
降の住空間のニーズに応じて 2 階建てとし、さらに部屋数
を増やし、座敷の配置を変化させたことが明らかになっ
た。