土壌は水圏に存在する様々な重金属イオンを保持することが知られており,これら重金属の貯蔵庫としての役割を担っている。その機構は土壌を構成する金属酸化物の表面水酸基と溶存化学種との相互作用により説明されている。そのため,異なる金属酸化物間で重金属イオンの保持能を比較する際には,表面水酸基の数が重要な要素の 1つとなる。表面水酸基の定量法の 1つに表面水酸基と NaOH水溶液との酸塩基反応に基づいた方法がある。この方法では反応後の溶液中に残存する OH 濃度を中和滴定により定量し,その結果から表面水酸基量を算出する必要が あるため操作が煩雑である。発表者は,中和滴定の代わりにフローインジェクション分析法( FIAを用いたアルカリ度の定量法により二酸化マンガン表面の水酸基の定量を行った )。しかし本手法でも,二酸化マンガンと NaOH水溶液の反応と,反応後の溶液中に残存する OH 濃度の定量を個別に行う必要がある。そこで本研究では, NaOH水溶液との反応と残存する OH 濃度の定量を同時に行える循環式分析システムを開発し,この分析システムを用いて金属酸化物表面の水酸基の定量を試みた。本発表では金属酸化物の例として,土壌に豊富に存在し重金属イオンの保持能 が高いとされているδ-MnO2を用いた。