著者らは,高温超電導変圧器を用いた小型・軽量の交流大電流電源の開発を行っている.変圧器の一次側には低電流源を接続し,巻数比の大きな変圧器を使用することで二次側に大電流を流すことのできる構成であり,高温超電導変圧器を用いることにより小型・軽量化を図っている.この二次側の交流電流を全波整流し直流化することにより小型・軽量の直流大電流電源を開発することも併せて進めている.本報告では,直流電源の概要とともに,主として本電源に用いられる高温超電導変圧器の常電導転移検出・保護システムについて述べる.
常電導転移とは,電気抵抗がゼロである超電導体に電気抵抗が発生する現象のことであり,超電導機器には大電流通電をして使用することが多いため,電気抵抗が生じた際,過大な発熱が生じ,焼損などの事故が引き起こされることがある.よって,常電導転移が生じた場合には迅速に検出し,通電電流を遮断して発熱を除去し,変圧器を保護する必要がある.著者らはこれまでに有効電力法という保護方法を開発してきており,正弦波電流通電において変圧器に対する有効性を示してきた.本直流電源では,変圧器にひずみ波が通電される.この場合,後述のキャンセルコイルと変圧器のインダクタンスの周波数特性が異なり,十分に誘導電圧が除去できない可能性があること,また交流損失が増大することにより,常電導転移検出が適切に行えない可能性がある.本報告では,100 A以下程度での通電状況下における有効電力法の適用可能性について検討した結果について報告する.