【目的】ミーアキャット Suricata suricatta(SS)はマングース科に属
する寿命約12 年の小動物で、近年、愛玩目的の飼育が増えているが、
疾病に関する報告は少ない。本研究はSS に高率に発生する鬱血性心
不全の病理学的特徴および病理発生を明らかにすることを目的とし
た。
【材料と方法】2020 年からの3 年間に自然死した7 頭を病理解剖し、
全身諸臓器を病理組織学的に検索した。心臓は全て横断面、一部は縦
断面で標本を作製し、観察した。
【結果】程度に差はあったが7 頭中5 頭に全身性鬱血や体腔水腫で特
徴づけられる右心不全を伴う両心室拡張を認めた。その内訳は雄3 頭、
雌2 頭、4 か月齢1 頭、3 ~ 7 歳の成体4 頭であった。成体3 頭には
両心室拡張が顕著であった。これら5 頭には、組織学的に個体差はあっ
たが共通して、瀰漫性心筋線維の水腫性変性や線維化がみられた。線
維化は左心室心内膜下層に好発した。成体4 頭の特筆すべき病変とし
て心室間溝心外膜下から心室中隔~左室壁にかけて心筋脱落と瀰漫性
~置換性線維化が顕著であった。また、4 カ月齢個体では同部位に高
度心筋壊死が観察された。その他、石灰化、心筋の軽度波状走行とき
に錯綜配列、心筋線維好酸性化、空胞変性、萎縮、肥大を認めたが、
炎症はなかった。これらの死因は鬱血性心不全と判断された。
【考察】SS には高率に右心不全徴候を示す心拡張が発生し、死因とな
る重要な病変であることが明らかになった。その組織学的所見として
心筋変性と線維化があったが、5 頭に認めた心室間溝部分の病変に関
しては、冠状動脈支配域との関連も含めて精査する必要があった。併
せて、SS の診療上、心病変を注視する必要がある。