【背景】採卵鶏は卵巣や卵管に腫瘍が好発するが、明瞭な腫瘤を形成
せず原発巣の特定が困難なことが多い。また、中皮腫や他臓器由来の
腺癌との鑑別も時に必要となる。今回、鶏の腫瘍の鑑別に有用な免疫
染色マーカーを明らかにするために、免疫組織化学的に検討した。
【材料と方法】約600日齢の採卵鶏で、正常な卵巣と卵管3例、卵管
腺癌3例を対象とした。Cytokeratin (CK) AE1/AE3、CK 5/6、CK7、
CK20、Vimentin、Estrogen receptor (ER)、Progesterone receptor (PgR)、
オボアルブミン (OVA)、PAX8、カルレチニン (CAL) およびWT1 に対
する免疫染色を実施した。
【結果】各3例はいずれも同様の染色性を示した。AE1/AE3は卵巣表
層上皮、卵管粘膜上皮および中皮細胞に陽性で、膨大部および峡部腺、
卵管腺癌は一部陰性。Vimentinは卵巣表層上皮、卵管粘膜上皮、中皮
細胞および卵管腺癌で一部陽性。OVAは卵巣表層上皮、膨大部および
峡部腺、中皮細胞に陽性を示したほか、卵管腺癌で一部陽性。ERと
PgRは卵巣表層上皮、中皮細胞および卵管各部位で一部陽性。CALと
WT1は卵巣表層上皮と中皮細胞が陽性で、さらにWT1は卵管腺癌の
一部も陽性を示した。その他の抗体は交差反応がなかった。
【考察】AE1/AE3 は膨大部および峡部腺、卵管腺癌で一部陰性を示し、
腫瘍発生部位との関連が窺われた。OVAは膨大部および峡部腺や卵
管腺癌の他、卵巣表層上皮や中皮細胞にも陽性を示したことから、卵
巣腺癌や中皮腫も陽性となる可能性が示唆された。また、中皮細胞は
WT1よりもCALの染色性が良好で中皮腫への応用が期待できるが、
卵巣腺癌でも陽性となる可能性がある。以上のことから、鶏の腫瘍の
診断には複数の抗体を組み合わせる必要があると考えられた。