常電圧放射線発生装置(オルソボルテージ)を用いて治療した口腔内悪性黒色腫の犬の17症例について回顧的研究を行った.治療プロトコルは1回8Gyを週1回,4週間とし総線量32Gyとした.肉眼病変に対する治療反応は73.3%で認められ,無進行期間及び生存期間中央値はそれぞれ126日,241日であった.ステージ別の生存期間はステージⅠが中央値に達せず,Ⅱが258日,Ⅲが80.5日,Ⅳが115日であり,診断時転移の有無(あり71日,なし303日),外科切除の有無(あり582日,なし164日),治療反応(CR 438日,それ以外154.5日)が有意に生存期間と関連していた.放射線障害はほぼ全例で認められたものの,多くは軽度であり,犬の口腔内悪性腫瘍に対する常電圧放射線治療は有用な治療オプションになりうると思われた.