本研究はアリ類が音声をコミュニケーションに利用する重要性を明らかにするという新規性の高い研究である。とくに中南米に生息する菌食アリの中のもっとも進化した種であるハキリアリにおいて、「言語システム」に類するほどの複雑な音声を使用していることを世界に先駆けて明らかにした。さらに、菌食アリのグループの中でも社会構造が原始的なものから進化的なものになるにつれて、音声コミュニケーションの程度も多様になることが示された。これらのデータによって、アリ類の社会進化と音声コミュニケーションには明確な関連があることが示唆された。今後は、これらの成果をいかに応用していくかを追求していく。