目的 ジホルミルベンゼン(メタ-体、パラ-体)とN,N-ジアルキルエチレンジアミン(メチル体、エチル体)との脱水反応から得られる4種類のイミン四座連結配位子を合成し、それらと二価銅塩(塩化物塩、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、過塩素酸塩)との組み合わせからなる配位高分子錯体の合成を検討し、学生実験課題として適応可能かどうかを検証することを目的とした。
成果 各種溶媒中での紫外可視分光測定の結果は、4種類の四座連結配位子は何れの銅塩とも錯体を形成していることを示唆したが、当初計画していたような溶液色調の溶媒依存性(ソルバトクロミズム)は確認できなかった。合わせて、溶媒蒸発法や貧溶媒添加による再結晶法を試みたが、上記の組み合わせからなる錯体を固体として単離するに至らなかった。得られた錯体の高い潮解性のために、固体として単離できなかったと推測している。よって、学生実験に導入しても高い教育効果が得られないと判断した。
上記の4種類の連結配位子のイミン部分を水素化し、4種類のアミン四座連結配位子を合成した。それらと二価銅塩との組み合わせからなる配位高分子錯体の合成を検討した。同時に、2,2-ビピリジンや1,10-フェナントロリンといったキレート配位子で配位座の一部を占有させた二価銅塩とアミン四座連結配位子との反応による配位高分子錯体の合成も検討した。何れの組み合わせにおいても、錯体が形成していることが示唆されたが、固体として目的物を単離するに至らなかった。この原因も、恐らくであるが、錯体の潮解性によるものだと考察している。2,2-ビピリジンを用いた系では、溶媒蒸発法や貧溶媒添加による再結晶を行うと、単結晶が得られた。しかしながら、それらは赤外分光や単結晶構造解析の結果から、目的とする配位高分子錯体ではなく、水酸基により連結された二つの銅イオンを持つ多核錯体であることが明らかになった。