2020年度において、以下の成果を得た。
(1)強磁性スピンゆらぎが存在する超伝導体K2Cr3As3において、As核位置での電場勾配の主軸を核四重極共鳴実験及び第一原理の計算から明らかにした。この成果は、単結晶における核磁気共鳴法によるスピン三重項超伝導の実証の基礎を成すものである。
(2)ワイル半金属TaAsにおいて、巨大な軌道反磁性を見出し、低エネルギー励起を明らかにした。ワイル半金属はトポロジカル的なエネルギーバンドを有し、スピン三重項超伝導の状態密度と類似点をもつ。本研究では、その低エネルギー励起による核スピン格子緩和率がK2Cr3As3の超伝導状態と全く同じ温度依存性を示すことを発見した。
(3)重い電子系CeRh0.5Ir0.5In5において、奇周波数ギャップレス超伝導状態を発見した。このような新奇な超伝導状態はスピン三重項超伝導と深く関連するものである。
(4)銅酸化高温超伝導体YBa2Cu4O8において、その常伝導状態が電子液晶的(ネマティック)な振る舞いをすることを発見した。このような新奇な電子状態の発見はCuxBi2Se3の超伝導状態(ネマティック状態)の普遍性を理解するのに有益である。