本研究の主目的である”Diamond-like carbon(DLC)/有機高分子ハイブリッド成膜技術を応用した人工血管開発”に向けて、初年度は土台となる成膜技術開発に取り組んだ。つまり、DLC成膜を施した基材表面(シリコンウエハー使用)に高密度の高分子ブラシを作成する手技確立に挑んだ。高分子ブラシの第一候補化合物として生体適合性ポリマーとして知られるMPC(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)を選択し、DLC表面に45nmのMPCポリマーブラシの合成に成功した。また、本研究成果の性能評価を行うための対照データ取得目的に、既存技術(MPCポリマーブラシの単体成膜)の性状評価を行った。具体的には、シリコンウエハー上にMPC単体成膜を行い、その物性および安定性を明らかにした。つまり、本研究での到達目標として、一つの具体的数値設定が可能となった。現時点では、DLC/MPCハイブリッド戦略により、安定性の面でDLC上にMPCポリマーブラシを構築する一定のメリットを示せている。医療機器・基材への応用には高い安全性が求められるため、まずは成膜素材の剥離・塞栓予防が非常に重要と考えている。よって、次年度は更なる性能向上を目指して最適な成膜条件を決定し、特許化も含めて進めて行く。