DLCは生体と同じく炭素と少量の水素を主体とした物質で、その表面は非常に非活性な状態であるが、実際の血管内皮表面はタンパクで覆われており、その表面にはカルボキシル基やアミノ基といった官能基が多数存在する。DLCコーティングにこれらの官能基を付加した方がより生体に近づいた(バイオミメティックな)DLCとなるのではないかと考え、カルボキシル基付加DLC、アミノ基を付加DLC(A-DLC)開発を試み、成功した。
DLC はextended polytetrafluoroethylene(ePTFE)界面を親水性に傾けるが、カルボキシルDLCではさらに親水性が向上しており、官能基付加は実際に界面に大きな変化を与えている事が確認されている。本年度は、アミノ基とカルボキシル基の両方が付加される両性DLCの開発を行ったが、アミノ基の最適化が予定よりすすんでおらず、両性DLCの開発も遅れている。そのため、予定していた、SDS-PAGE試験を行うことは見合わせている状況である。しかし、簡易TMT解析のプロトコールを策定し、測定外注先の島津テクノリサーチ社と打ち合わせを行い、合意を得ている。また、接触試験の回路を作成し、準備を整えている。両性DLC(Z-DLC)の開発が終了次第測定を行う予定としている。