GRAINE計画:2023年豪州気球実験の原子核乾板 による宇宙線原子核解析
杉侑樹,伊代野淳,秋田将利,諌山雄大, 臼田育矢, 河原剛義 ,小宮山将広, 杉村昂,長原翔伍,中野敏行, 中村友亮, 中村光廣 , 中村悠哉,林煕崇,南英幸,山本紗矢,六條宏紀,青木茂樹, 東崇史,岡本一紘,小田美由紀,加藤拓海,髙橋覚,山下潤,山 下真優,米野翔真,仲澤和馬,吉本雅浩,児玉康一, 他 GRAINE collaboration
2024年度 応用物理・物理系学会 中国四国支部 合同学術講演会
応用物理学会中国四国支部、日本物理学会中国支部・四国支部、 日本物理教育学会中国四国支部
徳島大学
https://annex.jsap.or.jp/chushi/wp202012//wp-content/uploads/2024/05/jsapcs2024_CallForPaper.pdf
宇宙空間には高エネルギーの原子核や素粒子があり、宇宙線と呼ばれる。宇宙線原子核は、ビックバン起源の陽子・ヘリウム・リチウム、宇宙線破砕反応を起源とするLi、Be、B、恒星の元素合成を起源とするCNO から鉄族原子核、中性子数が陽子数より多いNi よりさらに重い原子核まで観測されている。特に中性子過剰の重原子核の起源については、中性子捕獲プロセスが短時間に起こるr 過程により生成されると理論的に予言され、中性子過剰環境が実現されるが超新星爆発や中性子星連星の合体が考えられている。Ni より重い原子核組成は、主に天体核物理のスペクトル解析と直接観測によって行われてきているが、その頻度の少なさから理論的予想に十分な制限を与えることができていない。この宇宙線重元素の起源を解明するために、我々は直接観測する方法として空間分解能・角度分解能・荷電分解能に優れる原子核乾板を用い、観測を実現した。そして、2023 年に豪州で行った宇宙ガンマ線観測実験(GRAINE:Gamma Ray Astro Imagerwith Nuclear Emulsion )で24 時間2.5 平方メートルの気球フライトを実現し、Fe 族以上の重原子核を超えることが可能となった。原子核乾板内に記録された宇宙線原子核の飛跡の数は膨大であるため、機械学習を活用した飛跡の自動認識技術の導入は必須である。画像データは、共同研究機関である名古屋大学で開発した巨大な顕微鏡HTS2(Hyper Track Selector 2)を用いて取得可能である。HTS2 は、GRAINE 実験の主目的であるガンマ線イベント(対生成された電子・陽電子飛跡)の検出に特化した装置であり、宇宙線原子核の飛跡抽出・認識には新たな指標が必要となる。本研究では、フライトで使用した原子核乾板全面に記録された宇宙線原子核の飛跡を、画像データから機械学習の技術を使って検出し、飛跡性質の解析を行い、宇宙線原子核核種を特定し、元素組成分布を明らかにすることを目的として、機械学習を用いたプログラム開発を進めている。今回は、GRAINE2023 実験のガンマ線検出に向けた進捗状況と原子核乾板中に記録された宇宙線原子核飛跡の画像を用いて、原子核の同定に向けた機械学習による進捗・結果について報告する。図1の画像は、HTS2 で得られた画像データから機械学習(Faster RCNN 法)で重原子核を検出させた画像結果である。