博多遺跡群での⼈⾻の出⼟状況は、① 棺を有する墓や⼟壙墓に埋葬され出⼟したもの . ② 解剖学的位置を保たず、散乱した状態や⼀部の⾻格のみが出⼟したもの . ③ コンパクトに全⾝が集⾻され出⼟したもの . がみられる。市史編纂の⼀環で、①の例として、上呉服町(博多遺跡群第 26 次調査)出⼟⽊棺墓⼈⾻(13 世紀前半)を再調査した。本資料は、中世としてはやや⾼⾝⻑の⼥性の例として既報告である[中橋・永井 1986]。副葬されたやきもの、道具類には、遺体が⾝の回りで⾼価な品々を愛した様⼦がうかがわれ、社会階層としては上位にある⼈物であったことが推定される。発掘後、⼟が付着した状態で保存されていて、上顎⾅⻭には不正咬合の痕跡がみられ、右横顔に添えられた枕状の有機物の痕跡がみられた。この遺体で最も不可解な点は、イノシシ類左橈⾻が副葬されていた点であった。ただし、この橈⾻は単独で出⼟し、対になるべき尺⾻がみられなかった。このことは、副葬された当初から、この⾻は単体で⼊れられ、⾁はなかった可能性が⾼い事を⽰している