ニホンジカ は、日本列島においてエゾシカ 、ホンシュウジカ、キュウシュウジカ、ヤクシカ、 マゲシカ、ケラマジカの6亜種が存在している。特に、後4亜種は前2亜種に比べ体格が小さく 小型ニホンジカとして区分できる。本州島の島嶼部や地理的隔絶が進んだ公園等ではホンシュ ウジカと呼ぶに相応しい大型のニホンジカと、キュウシュウジカに類似した小型のニホンジカ がみられる。
福岡市埋蔵文化財センター所蔵博多遺跡群第40次調査 (富岡2011、 福岡市教委1990)で出土した中世(14世紀)に帰属すると推定される 小型の鹿角(図4)は、加齢した小型ニホンジカが有する特異な形質が された。
博多遺跡群は、海外からの遺物が出土することからも海外より輸入された動物遺存体が含まれるがあるものの、本資料は角表面の顆粒と動脈の痕跡で構成される彫刻のあり方から日本産の小型ニホンジカと判断した。
図3の偏差折線で示される通り、この資料が特徴的であるのは、基部が極端に小型であること、さらに第1枝が極端に短い(偏差が約- 4)である。このうな第1尖の小型化は、ホンシュウジカの中でも大型の個体が多くみられる地方である東北地方の個体群でもみられる現象であり、地理的異を考慮する必要があるものの、加齢(老形化)や個体密度・食草分布に起因する貧栄養の影響も可能性として考える必要が指摘できる。 本研究の成果は、福岡市史編纂事業に伴う調査成果を含んでいる。