筆者らは覚張を中心に日本各地の遺跡出土人骨についてパレオゲノミクス分析を実施している(Cooke et al. 2021)。特に人骨は沿岸部の貝塚から出土する確率が高い事から、中国地方内陸部の洞窟で発掘された資料の調査が必要と考えられ、庄原市教育委員会・時悠館と広島大学に許可を申請し、本地域で代表的な帝釈名越岩陰1966年調査において出土した人骨についてパレオゲノミクスを含む再調査する機会を得た。
1. 帝釈名越岩陰遺跡1966年出土1号男性人骨は、頭蓋骨形態分析では、縄文時代の帝釈峡遺跡群出土人骨等と大きく異なる点がみられた。
2. 帝釈名越岩陰遺跡1966年出土1号男性人骨は、中世の中国地方西部吉母浜遺跡や九州北部の博多遺跡群、さらに近世の福岡市内の遺跡群出土男性人骨にある程度似ていた。吉母浜遺跡の資料とは、上顔部において大きな違いがみられた。
3. 帝釈名越岩陰遺跡1966年出土1号男性人骨は、放射性炭素年代測定(AMS法)によって中世後半から近世前半の人骨であることが明らかになった。