Mn, Fe, Siを殆ど含まず、2024合金と同数量のCuとMgを含むT4およびT6処理されたAl-Cu-Mg合金の試験片について繰り返し引張疲労試験を行い疲労亀裂発生の起点について調べた。T4試験片は、T6材に比べて静的強度は低いが疲労強度は高い。T4材とT6材の疲労亀裂発生はそれぞれ試験片表面の粒内と粒界で発生した。この理由について、T4材の時効組織は粒界に沿って無析出物帯(PFZ)は形成しておらず、GPB(1)ゾーンが粒界近傍まで全面に形成しているのに対してT6材は粒界上に粗大なS相粒子が形成しており、粒内にはS’相ラスとGPB(2)ゾーンが形成しているため粒界近傍には幅約600nmの無析出物帯(PFZ)が形成している。従って、T4材の疲労亀裂は試験片表面の入り込みと突き出しによる固執すべり帯から疲労亀裂が発生するのに対して、T6材ではT4材の母相よりも柔らかい粒界近傍の無析出物帯(PFZ)が疲労亀裂の発生点となり、亀裂発生が早くなり結果的に疲労強度が低下したと考えられる。