【目的】ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)は、偏性嫌気性グラム陽性有芽胞細菌でガス壊疽と食中毒を引き起こす。ガス壊疽の病原因子としてα毒素(ホスホリパーゼC)が知られている。α毒素遺伝子(plc)の上流(−66〜−44)には、3つのphased A-tracts (3A)が存在している。この配列がα毒素産生にどの程度影響を及ぼすのか変異株を作製して調べた。
【方法】ホスホリパーゼC (PLC)のC末端領域に対する抗体(抗PLC-C)と解糖系の酵素であるglyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase (GAPDH)に対する抗体(抗GAPDH)を用いて培養液中のα毒素とGAPDHをウェスタンブロット法により検出した。これらのバンドの強度からα毒素産生量を評価した。
【結果】phased A-tractsを欠いた変異株(HN13 0A)では、野生株 (HN13 3A)と比較してほとんどα毒素を産生しなくなった。これに対してα毒素産生を促進するVR-RNA欠失株(HN13 Dvrr)では、α毒素産生が少なからず認められた。
【考察】以上のことから、plc遺伝子上流に存在するphased A-tractsがα毒素産生に影響を強く与えていることが明らかになった。