講演・口頭発表等

基本情報

氏名 片山 誠一
氏名(カナ) カタヤマ セイイチ
氏名(英語) Katayama Seiichi
所属 生命科学部 医療技術学科
職名 教授
researchmap研究者コード 1000052332
researchmap機関 岡山理科大学

タイトル

ウェルシュ菌VR-RNA欠損株におけるphased A-tractsのα毒素産生とα毒素遺伝子の転写に与える影響

講演者

片山誠一、松井佐弥、佐藤日南太、橋川直也、松永 望

会議名

第34回生物試料分析科学会年次学術集会

開催年月日

2024/03/24

招待の有無

無し

記述言語

日本語

発表種類

学会講演(シンポジウム・セミナー含む)

会議区分

国内会議

会議種別

口頭発表(一般)

主催者

生物試料分析科学会

開催地

大阪府大阪市

URL

概要

ウェルシュ菌 (Clostridium perfringens)はグラム陽性有芽胞偏性嫌気性の細菌でヒトのガス壊疽や食中毒の原因菌として知られている。ガス壊疽の主要な病原因子はα毒素 (ホスホリパーゼC, PLC)であり、その遺伝子 (plc)の発現はいくつかの転写制御因子によって制御されている。その代表的な転写制御系としてVirR/S二成分制御系が知られている。この支配下にあるsmall RNA分子であるVR-RNA (vrr, CPE0957)がα毒素遺伝子 (plc)の発現を促進する。これとは別に、plc遺伝子のプロモーター上流(-66 to -40)には、3つのphased A-tracts (3A)配列が存在しており、in vitroにおいて低温でのplc遺伝子の発現を促進することが明らかになっている。
本研究では、このphased A-tracts配列がα毒素遺伝子の転写を促進するVR-RNAを欠損した 株(HN13 Δvrr)において、α毒素産生とその遺伝子発現にどの程度影響を及ぼすのかphased A-tractsを欠失した変異株を用いて調べたので報告する。
 ウェルシュ菌野生株としてHN13(3A)株を用いた。この株を元にphased A-tracts 欠失株(0A), VR-RNA欠損株(Δvrr)、その相補株(Δvrr/pvrr)などの変異株を作製した。これらのウェルシュ菌を37℃、30℃、25℃の条件下、GAMブイヨン培地で静置培養し、対数増殖期 (OD600=0.8 ± 0.1)に集菌した。それぞれの培養上清をトリクロロ酢酸(TCA)沈殿して濃縮した。このサンプルを用いてPLCのC末端領域に対する抗PLC-C抗体と解糖系の酵素であるGAPDH (glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase:CPE1304)に対する抗GAPDH前記の様にウェルシュ菌を培養後、集菌した菌体からtotal RNAを抽出した。この total RNAを鋳型とし、ランダムプライマーと逆転写酵素を用いてcDNAを合成した。このcDNAを鋳型とし、適当なplc遺伝子のプライマーを用いてリアルタイムPCRを行なってplc遺伝子の転写量を測定した。内部対照として16S rRNAを用いた。
 phased A-tracts配列が欠失する (0A)と、VR-RNA欠損株 (Δvrr)、それらの相補株 (Δvrr/pvrr)においても、α毒素の産生が顕著に(1/14~1/5)低下することが示された。またVR-RNA欠損株(3A Δvrr)で低温でのα毒素産生量の有意な増加が認められた。plc遺伝子の転写量を調べるとα毒素の産生量とパターンがよく一致した。phased A-tracts配列が欠失する (0A)とplc遺伝子転写量は顕著に(1/46~1/7)減少した。HN13 (3A)株、 HN13 (3A)Δvrr株で低温によるplc遺伝子転写量の増加傾向がみられ、HN13(3A)Δvrr /pJIR418株, HN13(3A) Δvrr/pvrr株では、低温でのplc遺伝子転写量の増加が有意に認められた。よってin vivo においてVR-RNA欠損株のplc遺伝子発現が低温で促進されることが明らかになった。以上のことから、phased A-tracts配列は、VR-RNAを介したVirR/S二成分制御系とは独立してα毒素遺伝子の発現に寄与していることが示唆された。