秋田県南部に位置し,鳥海山の麓に広がるにかほ市の白雪川周辺地域では,1801年(享保元年)夏に鳥海山で発生した火山泥流により,大規模な洪水被害が生じたとされている(林ほか,2017).さらに,1804年(文化元年)象潟地震では白雪川河口付近において,津波被害が及んだとされる(羽鳥,1986).一方,この地域では津波シミュレーション結果から,津波が河川を遡上して氾濫した可能性は低いとの報告もある(渡辺ほか,2021).
また,近年の調査では,にかほ市三森地区で白雪川起源の洪水堆積物が確認されており,その堆積年代は11〜13世紀以前と推定されている(鎌滝ほか,2019).この時期に形成された洪水堆積物は,鳥海山北麓に広がる火山麓扇状地の鳥海山に近い地域で報告されている火山泥流堆積物(南ほか,2015;Minami et al.,2019)と関連している可能性があるが,その詳細は明らかになっていない.鳥海山火山防災協議会(2025)によると,今後も火山泥流が白雪川沿いの居住地域に到達する可能性があるとされているが,火山泥流堆積物の分布範囲については言及されていない.そのため,その分布範囲の把握も地域の防災対策を検討する上で重要な課題である.
本研究では,秋田県にかほ市三森〜芹田地区を対象に,イベント堆積物の分布範囲を明らかにし,火山泥流が到達する可能性の裏付けを行い,将来的な防災対策に資する地質学的知見の整備を目的とし,ボーリング調査を実施した.