日本海東縁地域では,1833年庄内沖地震,1940年積丹半島沖地震,1964年新潟地震,1983年日本海中部地震,1993年北海道南西沖地震など,19~20世紀に津波を伴う大規模な地震が次々と発生し,沿岸域に甚大な被害をもたらした(例えば,宇佐美ほか,2013).そのため,山形県沿岸地域の地震・津波防災を進める上で,過去の津波履歴を把握し将来の最大規模津波を想定することは極めて重要である.しかし日本海東縁では江戸時代以前の地震や津波に関する文書記録に乏しく(宇佐美ほか,2013).一方,歴史記録以前に発生した地震や津波に関する情報を,津波堆積物を指標とした古地震学的研究から補い,津波を伴うような海域における地震の履歴を明らかにする研究が各地でおこなわれている.しかしながら,日本海東縁地域では太平洋側と比べ津波堆積物研究の事例が少ないとされる(例えば,鎌滝ほか,2017).山形県飛島や秋田県男鹿半島では9~13世紀頃に津波が発生した可能性が指摘されているが(川上ほか,2014),その証拠は十分とは言えない.また,秋田県中南部では8~9世紀,13~14世紀,紀元前後に形成された津波堆積物の可能性があるイベント堆積物も報告されている(鎌滝ほか,2015など).このように日本海側では津波起源の可能性をもつイベント堆積物が複数確認されているが,多くは成因が未確定という状況である.鎌滝ほか(2025)は,飛島でみられるイベント堆積物に含まれる礫のインブリケーション解析から,その成因が津波という可能性を指摘した.一方,飛島ではイベント堆積物を挟む地層中から製塩土器片が出土しており,その土器が使用されていた時期を9世紀頃としている(相原ほか,2014).
本研究では,鎌滝ほか(2025)が津波堆積物と推定しているイベント堆積物の成因と堆積年代を明らかにするため,飛島北西岸にて海岸露頭および段丘面上のピット掘削による調査をおこなった.