東日本大震災では沿岸のみならず,河川を遡上し流下した津波が,河川堤防を越えて沿岸地域に甚大な被害をもたらした.そのため,沿岸域における津波防災を考える上で,津波の河川遡上への対策が重要である.一方,日本海側では活断層が陸地に近く,地震発生から津波到達までの時間が短い傾向に加えて,太平洋側と比較して津波のデータや記録は少ない.
そこで,本研究では日本海側,特に秋田県の小河川である竹生川と白雪川を対象に1983年日本海中部地震をもとに津波の数値シミュレーションを行い,実測値との比較検討を行った.その結果,竹生川周辺の津波堆積物であると推定されたものは日本海中部地震以前のものについても海由来であった.白雪川では引き波の際,①浜堤を越える,②白雪川に直接流入する,③白雪川の右岸において,東側に流れてから海に戻る様子が確認された.