本研究の調査地域は秋田県北部の八峰町沿岸部の沖積低地で,1983年日本海中部地震の震源域に面しており,同地震津波による浸水被害を受けた場所である.調査地域で採取されたボーリングコア試料から,湿地に堆積した泥炭や有機質シルトを主体とした細粒堆積物中に,砂を主体とした粗粒堆積物がみいだされた.そのなかの1層はある程度強い水流によって堆積物が再移動し,それが急速に堆積したイベント堆積物であることがわかった.イベント堆積物は,その内部構造や調査地点の地理的特徴から,津波によって形成された可能性が高いと判断される.津波堆積物の形成年代は,14C年代測定値から13~15世紀と推定されることから,1983年日本海中部地震の1回前のイベントが500~700年前に発生していたと考える.