親同士で形成される友人グループには,子育ての相談相手やサポートなどを得られる利点があるといわれており,居住地域に即した情報の交換と流通の基盤としても機能していると考えられる。
親の友人関係の形成や活動に関する従来の研究では,特に母親に注目した分析が行われてきたが,実際には必ずしも母親役割(あるいは父親役割)と直結しない,社会的属性や血縁,地縁などの影響も存在すると予想される。また,子育ての脱性役割化が叫ばれるだけでなく,既婚者の実態としても共働き家庭が増加している現状を踏まえると,就業形態や経済力などの影響も考慮した,男女共通の視点が必要だと考えられる。そこで本稿では,サポート・ネットワークと社会関係資本に関する研究の知見を援用し,子を持つ既婚男女を対象とした計量分析を行い,親同士の友人グループへの参加の規定要因を明らかにする。特に社会経済的地位,家族・親族などのサポート・ネットワークの影響に注目する。
分析の結果,個々の学歴・収入,サポート源および家事育児分担納得感の影響には男女で異なる傾向が見られる一方,社会経済的地位とサポート全体で見ると,父親と母親で共通の規定構造が明らかとなった。地位や既存のサポートが不足している親同士が友人グループへの参加によって補完を行うのではなく,既に生活環境が整った親同士が新たな人間関係を獲得している様相が見られた。