近年、化石中からタンパク質の残存が報告されているが、その残存プロセスに関する研究は未だ数少ない。本研究では約2万年前のゾウ類化石を用いて、骨組織の違いがタンパク質保存に及ぼす影響について検討した。特殊染色の結果、骨化石では強い染色性を示したが、象牙化石は殆ど染色されなかった。比色法による解析では、骨化石は現生生物の骨の約半分のタンパク質が残存しており、SDS-PAGEによる解析でもスメアー状の濃いバンドが観察された。一方、象牙化石ではタンパク質が殆ど検出されなかった。以上のことより、骨組織は多数の細管を有する象牙質よりタンパク質の保存性に優れていると考えられた。