モンゴル国中央ゴビに広く分布する上部白亜系ジャドフタ層(中 部カンパニアン階)は,恐竜類や哺乳類をはじめ多くの陸生脊椎動 物化石を産することでよく知られている.特にトカゲ類の化石は非 常に豊富で,これまでに数千点の標本が採集され, 種ほどが記載 されてきた.こうした背景のもと, 年に林原自然科学博物館モ ンゴル古生物学センター共同発掘調査隊により,ウディンサイール から保存状態の優れた大型のトカゲ類の化石が発見された.本標本 は多数の椎骨や四肢骨,肋骨などの体骨格と頭蓋および下顎の構成 要素からなり,頭蓋吻部が鈍く丸みを帯びる,歯の数が減少してい る,前上顎骨の歯が上顎骨の前方の歯より著しく小さいなどの特徴 を有すことから,モンスターサウリア類に帰属する.ゴビの上部白 亜系から知られるこの群としては,ジャドフタ層とバルンゴヨット 層より (VWHVLDPRQJROLHQVLV と *RELGHUPDSXOFKUXP の2種が知ら れており,本標本はこれらのうち上顎骨・前前頭骨に彫刻が存在し ないなどの点においては前者に類似しているものの,縁辺歯に毒を 伝達するための溝が存在しない,歯骨が強く腹側へ湾曲する,歯骨 の後方縁が前方へ凹むなどの点においては明瞭に異なる.これらの ことから,本標本は (VWHVLD とは異なる未記載種と考えられる.今 回の検討において ( PRQJROLHQVLV に同定された1点の頭骨標本に ついても比較した結果,産地の異なる標本の間で異なる形質が認め られた.従来の研究では,ジャドフタ層およびバルンゴヨット層堆 積期のゴビには2種のモンスターサウリア類が生息していたと考え られてきたが,本研究の結果は,当時のゴビに4種が分布していた ことを示唆する.