本研究では、画像認識技術を用いて、斜面崩壊のリスクが高い斜面を特定することを目的とする。本研究の特徴は、航空レーザー測量により得られた各グリッド周囲の標高値を用いて三次元地形モデルを作成し、三つの地形要素を色情報に変換した三次元カラー画像を対象に畳み込みニューラルネットワーク(CNN)モデルを学習させることで、土砂災害の高リスク領域を評価する点にある。
まず、グリッドデータの座標値を基に周囲の標高値を抽出し、自グリッドの標高値を減算することで、標準化された三次元地形モデルを構築した。この三次元地形モデルに対し、グリッドごとの傾斜量およびラプラシアン地形量を加えた。これら三つの地形量を16ビットRGBカラーインデックスに反映させ、カラー画像として定量的に表現する手法を開発した。開発した手法により、三次元地形モデルは一枚のカラー画像として表現される。
対象流域3地域については、それぞれ10万枚以上の画像を容易に生成できた。高リスク領域は、三次元地形モデルの中心が過去に斜面崩壊の発生した領域に含まれる場合と定義した。これらの画像を説明変数としてCNNモデルの学習に使用した結果、発生と非発生の判別精度は均衡し、約80%の正答率が得られた。
評価単位は1mグリッドという高解像度にもかかわらず、提案手法によって高リスクグリッドが周辺地形に応じたクラスターを形成し、地形整合性のある評価が可能となった。さらに、得られた結果はこれまで報告されてきた豪雨時の斜面崩壊現象における地形特性とも一致していた。このことから、提案手法は従来手法と比較して微細な地形の不規則性を高精度に捉えることが可能であることが示唆された。