『季の家』は、プラダー・ウィリー症候群という個性を持った1人の男の子に贈られた、北海道網走の帽子岩を望む小さな家である。彼には、その個性により、旺盛な食欲や発達の遅れ、低身長等が現れると言われている。我々は彼のために、この家での生活自体が、日常的な食事療法や運動療法になるよう計画した。例えば、常に他人の目に触れるため、自然に食品等の整理整頓が意識される「廊下一体型キッチン」や、日常生活の中で自然に運動が触発される「多彩なステップ」と「ボルダリングウォール」を設計した。また、いざという時、彼を愛し、彼を尋ねた人々が、彼への救いを祈れる「玄関」を計画した。この玄関からは、オホーツク海に浮かぶ「帽子岩」を望める。帽子岩は、かつてアイヌの人々が漁に出た家族の無事を願った神聖な舞台であった。帽子岩から一筋の軸線で繋がったこの玄関には、祈りの光景が共起される。