1) 独自性:〈一本の大欅〉との出会いが、建築主に自身が登場するおとぎ話を想像させ、「ものがたる設計手法」となってこの住まいを創造した。その結果、この住まいは、日本のアルプスと呼ばれる立山の麓の田園風景が広がる地に、世代を超えて住み継ぐことが目指せるようになった。 2) 美性:この住まいは、先祖から譲り受けた〈一本の大欅〉から設計が始まった。そして、信仰の対象である立山の庇護感の中で、設計者と建築主は、その大欅に始まるものがたりを共有した。ものがたりの中で大欅は、孫を愛でる祖父母にも、祈れる御神木にもなる。大欅と共にある家族の光景は、とても美しい。 3) 持続可能性:私たちは、大量の生産・消費・廃棄を前提とした資本主義社会に生まれた建築が、時間的・経済的価値の劣化により消え去ってきた歴史を知っている。この住まいは、その宿命への挑戦でもある。建築主によって豊かに語られたものがたりは、この住まいに掛け替えのない愛着を芽生えさせる。そして、このものがたりが、この住まいを住み継ぐ原動力となり、資本主義の宿命を超えて、使い続けられる仕組みとなることに期待する。 4) 社会性:この住まいには、世界に共通する平和のメタファーを配置した。この住まいの棟持柱には、内部の大欅柱と外部の十字柱がある。前者は仏教、後者はキリスト教に由来するメタファーである。両者の起源は異なるが、どちらも今日世界が必要とする「平和」を象徴する。