重粒子線(炭素線)がん治療は重粒子線をがん患部に照射して行う治療法である.これは他のがん治療法に比べ,患者への身体的負担が少ないという特長がある.この治療を行う装置として重粒子線回転ガントリーというものがある.患者の体軸を中心に360度回転することで正確に患部に重粒子線を照射できる装置である.しかしながら,この装置は電磁石群やそれらを支える構造体のサイズ・重量が非常に大型であり,ドイツのハイデルベルグのものは全長25 m,重量600 t以上とされている.そこで,小型・軽量化のため,重粒子線の向きを制御するマグネットを超電導マグネットに変更した超電導回転ガントリーが開発され,全長13 m,重量300 tが達成されている.本装置のさらなる小型・軽量化に向け,漏れ磁場遮蔽に用いられている鉄ヨークを超電導シールドマグネットに置き換える研究が進められている.著者らは,その超電導シールドマグネットおよび重粒子線制御用の超電導ダイポールマグネットの設計評価のための磁場測定器の開発を行っている.この測定器の機構,測定方法,測定結果について報告する.