分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)のミトコンドリアDNA(mtDNA)の紫外線(UV)による損傷量を定量的PCRで測定することで、UV損傷mtDNAの修復過程を観察できる実験系を開発した。この方法で、種々のDNA修復変異体におけるUV損傷mtDNAの修復を解析した。分裂酵母のUVエンドヌクレアーゼ(Uve1p)は核とミトコンドリアにおけるUV損傷DNAの修復に関与することが知られている。本研究でも、Uve1pが照射後の修復培養2時間以内に起きるmtDNAの修復に作用していることがわかった。核DNAのUve1による修復経路で働くFlapエンドヌクレアーゼ(Rad2p)は、mtDNA修復に関与していなかった。したがって、ミトコンドリアでUve1pによる修復経路が完結するためには、Rad2pを代替する酵素が必要である。Uve1欠損株でも、修復培養時間を8時間程度に延長するとmtDNA損傷がほとんど消失した。そこで、後期の修復過程へのオートファジーの関与を調べたが、Atg1欠損により修復速度は低下しなかった。uve1∆細胞におけるmtDNAのコピー数が修復培養4時間以降に増加し、菌体の伸長がみられた。これらの結果は、修復培養の後期に新規にmtDNAが合成されることによって見かけ上の修復が起る可能性を示唆する。