Glyceraldehyde-3-phophate dehydrogenase(GAPDH)は解糖系に関与する酵素ではあるが、近年、様々な病原細菌において菌体表出に出現し、その病原性が注目されている。我々もまたウェルシュ菌においてGAPDHが表出していることを見出した。先行研究において黄色ブドウ球菌ではオートリシンとGAPDHが複合体を形成して、GAPDHが菌体へ表出していることが報告されている。そこで本研究では、ウェルシュ菌菌体表層上のオートリシンであるAcpがGAPDHとの複合体形成に関与している可能性ついて検討した。
菌株は土壌分離株であるstrain 13株(st 13株)、st13株を親株としてacp遺伝子(CPE1231)を欠損させたacp::erm株、およびキシロース誘導型プロモーター下流にacp遺伝子を挿入しacp::erm株へ形質転換させたacp::erm/pacp株を用いた。ELISAにより、菌体表層のGAPDH量はst13株と比較してacp::erm株では有意に減少し、さらにキシロース誘導によるacp::erm/pacp株ではGAPDHの表出量が回復した。また、フローサイトメトリ―の解析でもacp::erm株と比較し、st 13株では菌体表層にGAPDH表出していることが分かった。蛍光免疫染色により、Merge像ではGAPDHとAcpが共染色されていることが観察された。以上のことから、ウェルシュ菌GAPDHはAcpと複合体を形成することにより菌体表層へ表出していることが考えられた。