環境変化に適応する農家のレジリエンス:有田みかんの事例分析
本下真次・平岩英治
農業は衣食住のうち「食」という生活に直結する部分を支えており,SDGsの17のゴールのうち,「2 飢餓をゼロに」,「8 働きがいも経済成長も」,「17 パートナーシップで目標を達成しよう」を中心に,全ての目標達成に関わる重要な産業である。しかし,日本の農業は人口減少,海外からの農作物との価格競争,後継者・担い手不足など様々な課題を抱えている。農家が新たな取り組みに活路を見出す中で,国も法整備や支援施策などを通じて農家の所得の向上や雇用の確保を目指してきたが,人件費の増加や設備導入の費用負担,さらには販売ノウハウの欠如などから失敗に終わるケースも少なくない。 農家を取り巻く環境変化は,流通面では,従来の農協を通じた販売のみならず,多様化,マルチ・チャネル化する動きがある。インターネットの進展を背景に,ECモールや自社サイトでの通信販売,SNSなどを使った情報発信の重要性も増している。消費者行動面では,趣向の変化,核家族化などがある。そして,特に最近の大きな環境変化は,新型コロナ感染拡大とそれに起因する移動の制限による巣篭もり消費の増加などの傾向が見られる。 本研究では,農林水産省の果樹生産統計でみかんの生産量日本一の和歌山県,その中でもブランドとして知られる「有田みかん」農家の取り組みから,環境変化に対応する農家のレジリエンス要因を明らかにする。
日本商業学会第71回全国研究大会プロシーディングス
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