骨格筋はわれわれが体を動かすために必要な組織であり,筋量と健康寿命には正の相関がある.加齢に伴う運動機能の低下は深刻な問題となっており,骨格筋の再生能と可塑性のメカニズムを解明し,筋量を維持する方法を開発することが求められる.骨格筋の機能を担う筋線維は多数の筋前駆細胞の融合によって形成される.筋肥大の際には既存の筋線維に新たな筋前駆細胞が融合する.本研究は骨格筋の細胞融合に膜脂質の一種であるスフィンゴミエリンが関与する可能性に注目し,そのメカニズムの解明と,スフィンゴミエリン合成系の操作によって筋肥大の促進を図る方法の開発を目指す.スフィンゴミエリンが関与する筋前駆細胞融合のメカニズムは骨格筋細胞株C2C12を用いて解析し,その妥当性を初代培養細胞およびマウス骨格筋で検証する.また,培養細胞を用いてスフィンゴミエリン合成を促進する物質を探索し,動物実験によってその物質がマウスの筋量に与える影響を検証する.